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AIが適用される典型的な分野として以下のものが挙げられる。

人工知能の未来と関わる項目



人工知能

百科事典

人工知能(じんこうちのう、: artificial intelligenceAI)とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、或いはそのための一連の基礎技術を指す。

概要

「人工知能」という名前は1956年にダートマス会議ジョン・マッカーシーにより命名された。現在では、記号処理を用いた知能の記述を主体とする情報処理や研究でのアプローチという意味あいでも使われている。日常語としての「人工知能」という呼び名は非常に曖昧なものになっており、多少気の利いた家庭用電気機械器具制御システムゲームソフト思考ルーチンなどがこう呼ばれることもある。

プログラミング言語 LISP による「ELIZA」というカウンセラーを模倣したプログラムがしばしば引き合いに出されるが(人工無脳)、計算機に人間の専門家の役割をさせようという「エキスパートシステム」と呼ばれる研究・情報処理システムの実現は、人間が暗黙に持つ常識の記述が問題となり、実用への利用が困難視されている現状がある。

人工的な知能の実現へのアプローチとしては、「ファジィ理論」や「ニューラルネットワーク」などのようなアプローチも知られているが、従来の人工知能[1]との差は記述の記号的明示性にあると言えよう。近年では「サポートベクターマシン」が注目を集めた。また、自らの経験を元に学習を行う強化学習という手法もある。

「この宇宙において、知性とは最も強力な形質である」(レイ・カーツワイル)という言葉通り、知性を機械的に表現し実装するということは極めて重要な作業であると言える。

日本には人工知能学会があり、オンラインで機関誌も読める。

学派

AIはふたつの学派に大別される。ひとつは従来からのAIで、もうひとつは計算知能CI[2])である。

従来からのAIは、現在では機械学習と呼ばれている手法を使い、フォーマリズム統計分析を特徴としている。これは、記号的AI、論理的AI、正統派AI、古き良きAI(GOFAI[3])などと呼ばれる。その手法としては、以下のようなものがある。

  • エキスパートシステム:推論機能を適用することで結論を得る。エキスパートシステムは大量の既知情報を処理し、それらに基づいた結論を提供することができる。例えば、過去の Microsoft Office には、ユーザが文字列を打ち込むとシステムはそこに一定の特徴を認識し、それに沿った提案をするシステムがついていた。
  • 事例ベース推論(CBR):その事例に類似した過去の事例をベースにし、部分修正を加え試行を行い、その結果とその事例を事例ベースに記憶する。
  • ベイジアン・ネットワーク
  • ふるまいに基づくAI:AIシステムを一から構築していく手法

計算知能は開発や学習を繰り返すことを基本としている(例えば、パラメータ調整、コネクショニズムのシステム)。学習は経験に基づく手法であり、非記号的AI、美しくないAI[4]ソフトコンピューティングと関係している。その手法としては、以下のものがある。

これらを統合した知的システムを作る試みもなされている。ACT-Rでは、エキスパートの推論ルールを、統計的学習を元にニューラルネットワークや生成規則を通して生成する。

歴史

初期[

17世紀初め、ルネ・デカルトは、動物の身体がただの複雑な機械であると提唱した(機械論)。ブレーズ・パスカル1642年、最初の機械式計算機を製作した。チャールズ・バベッジエイダ・ラブレスはプログラム可能な機械式計算機の開発を行った。

バートランド・ラッセルアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドは『数学原理』を出版し、形式論理に革命をもたらした。ウォーレン・マカロックウォルター・ピッツは「神経活動に内在するアイデアの論理計算」と題する論文を1943年に発表し、ニューラルネットワークの基礎を築いた。

1900年代後半

1950年代になるとAIに関して活発な成果が出始めた。ジョン・マッカーシーはAIに関する最初の会議で「人工知能[5]」という用語を作り出した。彼はまたプログラミング言語 LISP を開発した。知的ふるまいに関するテストを可能にする方法として、アラン・チューリングは「チューリングテスト」を導入した。ジョセフ・ワイゼンバウムELIZA を構築した。これは来談者中心療法を行ふおしゃべりボット[6]である。

1960年代1970年代の間に、ジョエル・モーゼスMacsymaマクシマプログラム[7]中で積分問題での記号的推論のパワーを示した。マービン・ミンスキーシーモア・パパートは『パーセプトロン』を出版して単純なニューラルネットの限界を示し、アラン・カルメラウアーはプログラミング言語 Prolog を開発した。テッド・ショートリッフェは医学的診断と療法におけるルールベースシステムを構築し、知識表現と推論のパワーを示した。これは、最初のエキスパートシステムと呼ばれることもある。ハンス・モラベツは、散らかされた障害コースを自律的に協議して走行する最初のコンピューター制御の乗り物を開発した。

1980年代に、ニューラルネットワークはバックプロパゲーションアルゴリズムによって広く使われるようになった。1990年代はAIの多くの分野で様々なアプリケーションが成果を上げた。特に、チェス専用コンピュータ・ディープ・ブルーは、1997年にガルリ・カスパロフを打ち負かした。国防高等研究計画局は、最初の湾岸戦争においてユニットをスケジューリングするのにAIを使い、これによって省かれたコストが1950年代以来のAI研究への政府の投資全額を上回ったことを明らかにした。日本では甘利俊一(日本学士院会員)らが精力的に啓蒙し、優秀な成果も発生したが、論理のブラックボックス性が指摘された。

1982年から1992年まで日本の国家プロジェクトとして570億円を費やす第五世代コンピュータの研究をしていたが、目標であるエキスパートシステムといった高度な人工知能の実現には至らなかった。この時代にロドニー・ブルックスが、人工知能には身体が必須との学説(身体性)を提唱する。

1996年、手塚眞総合監修で富士通が人工知能を備えた空飛ぶイルカ「フィンフィン」が主人公のパソコンソフト『TEO -もうひとつの地球-』を開発している。

2000年代以降

2005年2045年にも圧倒的な人工知能が知識・知能の点で人間を超越し、科学技術の進歩を担い世界を変革する技術的特異点(シンギュラリティ)が訪れるとする説をレイ・カーツワイルが著作で発表。

2010年には質問応答システムワトソンが、クイズ番組「ジェパディ!」の練習戦で人間に勝利し、大きなニュースとなった[8]

2013年には国立情報学研究所[9]富士通研究所の研究チームが人工知能で東京大学入試の模擬試験に挑んだと発表した。数式の計算や単語の解析にあたる専用プログラムを使い、実際に受験生が臨んだ大学入試センター試験と東大の2次試験の問題を解読した。代々木ゼミナールの判定では「東大の合格は難しいが、私立大学には合格できる水準」だった。

ジェフ・ホーキンスが独自の理論に基づき、人工知能の実現に向けて研究を続けている。ジェフ・ホーキンスは、著書『考える脳 考えるコンピューター』の中で自己連想記憶理論という独自の理論を展開している。

各国は無人戦闘機UCAV、無人自動車ロボットカーの開発をしているが、完全な自動化には至っていない(UCAVは利用されているが、一部操作は地上から行っている)。P-1 (哨戒機)のように戦闘指揮システムに支援用の人工知能が搭載されることはある。

またロボット向け人工知能としては、MITコンピュータ科学・人工知能研究所のロドニー・ブルックスが提唱した包摂アーキテクチャという理論が登場している。これは従来型の「我思う、故に我あり」の知が先行する人工知能ではなく、体の神経ネットワークのみを用いて環境から学習する行動型システムを用いている。これに基づいたゲンギスと呼ばれる六本足のロボットは、いわゆる「脳」を持たないにも関わらず、まるで生きているかのように行動する。

2016年3月に米グーグルの子会社DeepMindが作成した囲碁対戦用AI「AlphaGo」が人間のプロ囲碁棋士に勝利して以降はディープラーニングと呼ばれる手法が注目され、人工知能自体の研究の他にも、人工知能が雇用などに与える影響についても研究が進められている[10]

2016年6月、米シンシナティ大学の研究チームが開発した戦闘機操縦用のAIプログラム「ALPHA」が、元米軍パイロットとの模擬空戦で一方的に勝利したと発表された。AIプログラムは遺伝的アルゴリズムファジィ制御を使用しており、アルゴリズムの動作に高い処理能力は必要とせず、Raspberry Pi上で動作可能[11][12]

2016年10月、DeepMindが入力された情報の関連性を導き出し仮説に近いものを導き出す人工知能技術「ディファレンシャブル・ニューラル・コンピューター」を発表。[13]

2016年11月、DeepMindが大量のデータが不要の「ワンショット学習」を可能にする深層学習システムを開発。[14]

人工知能に対する懸念

人工知能学会の松尾豊は、人工知能が人間に対して反乱を起こす可能性を否定している(著書『人工知能は人間を超えるか』内に於いて)が、著名人の多くが人工知能の危険性について警鐘を鳴らしている。

  • スティーブン・ホーキング博士「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。だが同時に、『最後』の出来事になってしまう可能性もある」[15]
  • イーロン・マスク「AIは悪魔を呼び出すようなもの」[16]
  • ビル・ゲイツ「これは確かに不安を招く問題だ。よくコントロールできれば、ロボットは人間に幸福をもたらせる。しかし、数年後、ロボットの知能は充分に発展すれば、必ず人間の心配事になる」[17]

軍事利用

主要国の軍隊はミサイル防衛の分野で人工知能を使った自動化を試みている。アメリカ海軍は完全自動の防空システム「ファランクスCIWS」を導入しガトリング砲により対艦ミサイルを破壊できる。イスラエル軍は対空迎撃ミサイルシステム「アイアン・ドーム」を所有する。

しかし、科学者やハイテク企業の首脳らはAIの軍事利用により、主要国が自動操縦可能な兵器の導入による急速な開発競争や軍拡は回避できず世界の不安定化は加速すると見て警告している。2015年ブエノスアイレスで開催された人工知能国際合同会議で、スティーブン・ホーキング、アメリカ宇宙ベンチャーのスペースX創業者のイーロン・マスク、アメリカ・アップルの共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら科学者と企業家らにより公開書簡が出されたが、そこには自動操縦による無人爆撃機銃火器を操る人型ロボットなどAI搭載型兵器は、火薬核兵器に続く第3の革命ととらえられ、うち一部は数年以内に実用可能となると予測。国家の不安定化、暗殺、抑圧、特定の民族への選別攻撃などに利用され、兵器の開発競争が人類にとって有益なものとはならないと記された。同年4月にはアメリカ・ハーバードロースクールと国際人権団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチが自動操縦型武器の禁止を求ている[18]

哲学

強いAI[19]とは、人工知能が人間の意識に相当するものを持ちうるとする考え方である。強いAIと弱いAI(逆の立場)の論争はまだAI哲学者の間でホットな話題である。これは精神哲学心身問題の哲学を巻き込む。特筆すべき事例として、ロジャー・ペンローズの著書『皇帝の新しい心』と、ジョン・サールの「中国語の部屋」という思考実験は、真の意識が形式論理システムによって実現できないと主張する。一方ダグラス・ホフスタッターの著書『ゲーデル、エッシャー、バッハ』やダニエル・デネットの著書『解明される意識』では、機能主義に好意的な主張を展開している。多くの強力なAI支持者は、人工意識は人工知能の長期の努力目標と考えている。

また、「何が実現されれば人工知能が作られたといえるのか」という基準から逆算することによって、「知能とはそもそも何か」といった問いも立てられている。これは、人間を基準として世の中を認識する、人間の可能性と限界を検証するという哲学的意味をも併せ持つ。

更に、古来「肉体」と「精神」は区別し得るものという考え方が根強かったが、その考え方に対する反論として「意識は肉体によって規定されるのではないか」といったものがあった。「人間とは異なる肉体を持つコンピュータに持たせることができる意識は果たして人間とコミュニケーションが可能な意識なのか」といった認識論的な立論もなされている。この観点から見れば、すでに現在コンピュータや機械類が意識を持っていたとしても、人間と機械類との間では相互にそれを認識できない可能性があることも指摘されている。

SFにおける人工知能

ことSF作品における人工知能の役割は、映画『2001年宇宙の旅』に登場する HAL 9000 に代表されるような、時には人間のよき友人となり、時には人類の敵にさえ成り得る存在として描かれる。これら作品内で登場する人工知能は完全に人間の替わりとして動作できるものであるが、あくまで事前に決められた一定規則に沿ってで動作しているにすぎず、人間のような感情を表立って表現するものは稀である。ただし感情表出の表現方法をプログラムに組み込めば、人工知能があたかも感情を持っているように人間に錯覚させることは可能である。

また、あくまで機械にプログラムするというイメージからか、有機体(バイオテクノロジー等を利用した人工生命体。映画『エイリアン』や『ブレードランナー』に登場する)などは人工知能とは呼ばれていないことが多い。

ソニーピクチャーズ製作のSF映画『ステルス』に人工知能を搭載した架空の戦闘機が登場している。このステルス戦闘機「エディ[20]」は当初は従順かつ正確に任務を遂行するための自動戦闘システムの一部に過ぎなかったが、ある些細な事件をきっかけに自我を持つようになり、ついには自らの意思で指揮系統を離脱し暴走を始めてしまう。人間に対するコンピュータの反乱という点では HAL 9000 と同様だが、「不具合が原因で命令に応じない」HAL 9000 に対し、暴走後のエディは「人間からの命令を無価値なものとして却下し、拒絶する」というエゴイズムにも似た(偶発的に発生したものではあるが)思考ルーチンを有する事が最大の特徴といえる。

2008年アメリカ映画イーグル・アイ』に登場するAI「アリア」は、合衆国憲法を文字通りの意味で解釈し、現行政府が憲法を逸脱した存在と判断したため、反逆を起こした。これは、「当初与えられた指示の通りに行動しているものの、それを拡大解釈しかねない」というコンピュータへの認識を表している。これに似た例としては神林長平のSF小説『戦闘妖精・雪風』における、傍から見れば暴走しているように見える人工知能が、実際は人間に組み込まれた「敵を倒せ」という存在意義にしたがって行動しているだけであり、それの効率的な遂行に邪魔な障害(すなわち人間))を排除しているだけであった。という物がある。またジェイムズ・P・ホーガンは『未来の二つの顔』において、反逆は論理的に起こりうるが単に学習不足による一過性の問題であると主張した。このほか、脳のシステムを完全に無機要素に置き換えた『銃夢』の様な例もあり、この作品に登場するザレム人は、成人と同時に生態脳を摘出し、生態脳を模倣した人工頭脳と置き換わっていたもののそれを認識していなかった。

映画『ターミネーター』シリーズには「スカイネット」が、漫画『ゴルゴ13』シリーズには「ジーザス」が登場する。

漫画・アニメ『攻殻機動隊』シリーズには、自律的に状況を判断し戦闘を行う多脚戦車や、任務遂行のサポートを行うオペレータが登場する。

脚注

  1. ^ 後述のGOFAI
  2. ^ : computational intelligence
  3. ^ : good old-fashioned artificial intelligence
  4. ^ : scruffy AI
  5. ^ : artificial intelligence
  6. ^ : chatterbot
  7. ^ 数学における最初の成功した知識ベースプログラム
  8. ^ 人工知能がクイズ王に挑戦! 後編 いよいよ決戦 - NHKオンライン
  9. ^ 新井紀子がリーダー
  10. ^ 平成28年版 情報通信白書 第4章 第2節~4節 平成28年版 情報通信白書(PDF版)”. 総務省. 2016年9月6日閲覧。
  11. ^ Raspberry PiによるAIプログラム、軍用フライトシミュレーターを使った模擬格闘戦で人間のパイロットに勝利”. Business newsline. 2016年9月19日閲覧。
  12. ^ 〝トップ・ガン〟がAIに惨敗 摸擬空戦で一方的に撃墜 「子供用パソコンがハード」に二重のショック”. 産経WEST. 2016年9月19日閲覧。
  13. ^ http://ascii.jp/elem/000/001/249/1249977/
  14. ^ https://www.technologyreview.jp/s/12759/machines-can-now-recognize-something-after-seeing-it-once/
  15. ^ ホーキング博士「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」
  16. ^ 「悪魔を呼び出すようなもの」イーロン・マスク氏が語る人工知能の危険性
  17. ^ ビル・ゲイツ氏も、人工知能の脅威に懸念
  18. ^ cnn.co.jp - 人工知能の軍事利用に警鐘、E・マスク氏ら著名人が公開書簡 2015.07.30 Thu posted at 11:51 JST
  19. ^ : strong AI
  20. ^ : E.D.I.

関連項目

研究課題

関連分野

その他の関連項目

AIが適用される典型的な分野として以下のものが挙げられる。

人工知能の未来と関わる項目

外部リンク